土地活用を成功させる上でとても大事なことのひとつが利回りです。アパート経営が儲かりそうだとか、駐車場経営は手間がかからず楽そうだとか、なんとなくのイメージで活用法を決めてはいけません。
土地活用は「経営」ですから、どのくらいの利益が見込めてどのくらいのコストがかかるのか、数字に基づいて考えることが大切です。
そのために欠かせないのが、利回りです。今回は、利回りの考え方や計算方法、注意点などについて詳しく解説します。これから土地活用を始めようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
利回りとは、投資額(初期投資)における収益の割合を示したものです。おおまかに「利益÷投資額×100」で求められます。計算式の詳細は、次章で説明します。
土地活用は「経営」ですから、何をするにも数字に基づく根拠が必要です。根拠のない投資は、単なるギャンブルになってしまいます。
どのくらいの利益が得られるのかをシミュレーションしておかなくては、投資した資金をいつまで経っても回収できず、経営が行き詰まることも考えられます。だからこそ、土地活用の方法を決める前に、利回りをよく検討することが大切なのです。
利回りは、高いほど投資した資金を回収できるまでの期間が短くなります。
たとえば簡単ですが、利回りが10%の場合1年間で1割の資金が回収できることになりますから、初期投資を回収するまで10年かかる、という計算ができます。
これが20%なら5年で回収できるという見込みが立つということです。
似たような言葉に、「利率」があります。利回りと同じく利益率を示す言葉ですが、こちらは金融商品で使われる言葉です。
金融商品の額面金額に対して何%の利子がつくかという意味であり、表面利率ともいいます。100万円で利率2%の商品を購入すると、1年後には102万円になるという意味です。
似たような言葉でも意味が違いますので、混同しないようにしましょう。
それでは利回りの計算方法について、詳しく解説します。利回りには主に「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。
表面利回りは数字が大きくなりがちなのでつい期待してしまいますが、大事なのは実質利回りです。
表面利回りは、単に収入を初期投資で割ったものであり、その他の経費などを含んでいません。満室であることを想定して割り出しているので、「想定利回り」と呼ぶこともあります。
「年間収入÷初期費用×100」として計算します。たとえば、5,000万円で購入した物件が年間500万円の収益を生み出すとしたら、
500万円÷5,000万円×100となり、表面利回りは10%です。
ただし、経費を考慮していませんので、当然数字は高めになります。ひとつの目安にはなりますが、これだけの利益が得られると考えてはいけません。
土地活用を始めようというとき、不動産会社が提示してくる利回りは表面利回りが多いため、どのように算出した数字なのかを確認することが大切です。
不動産広告などでもよく使われる数字ですから、目安として見るのは良いですが、鵜呑みにしてはいけない数字です。
実質利回りは、収益から経費を引いた数字を使います。
「(年間収入ー経費)÷初期費用×100」と計算し、経費を正確に把握できるほど現実に近い数字になります。
5,000万円の物件が生み出す収益が500万円だったとして、そのうち経費が100万円だった場合、(500万円ー100万円)÷5,000万円×100となり、実質利回りは8%です。
たとえばアパート経営の場合、経費には以下のものが含まれます。
<初期コスト>
・不動産仲介手数料
・不動産登記費用
・司法書士への手数料
・ローンの事務手数料
・不動産取得税
・火災保険料・地震保険料
・印紙代
・振込手数料
<ランニングコスト>
・管理会社への管理委託料
・仲介手数料
・修繕積立金
・固定資産税
・リース料
・リフォーム代
・水道光熱費
・ハウスクリーニングの費用
上記は一例ですから、土地活用の方法の方法によってはこれ以外のものも経費として含めることができるでしょう。
たとえば、マンションを建設する際に、もともと土地を持っていれば、初期費用として建物に関連する費用を考慮すれば良いですが、土地から購入すれば当然土地代が入ります。
都市部は土地代が高いので、土地代も含む場合は初期の利回りが小さめになる傾向があります。
AとB、2つの物件があったとして、表面利回りが同じでも経費の違いで実際の利益には差が出てきます。
たとえば、Aは順調に入居者を集め、満室状態が続いているので実質利回りは6%でした。しかしBは思いのほか建築に経費がかかったうえに空き室もあり、利回りが4%になったというケースもあります。
表面利回りは収益を購入価格で割っただけですから、高めに出るのは当たり前です。ですから、大事なのは経費を含んだ実質利回りなのです。
初期費用はもちろん、修繕費がかかったり、入居者がなかなか集まらなくて広告費がかかったりすれば、実質利回りに影響します。維持費用を抑えて利益を最大化するためにも、実質利回りを常に意識しておくことは重要です。
利回りは、土地活用の種類によって違います。ここでは人気のある土地活用として、アパート・マンション経営と駐車場について、利回りの相場がいくらくらいなのかご紹介します。
土地活用の王道ともいえるアパート・マンション経営ですが、理想の実質利回りは5%以上だとされています。
4%〜6%程度であれば安定的に収入が得られますので、最低でも3%以上は目指したいところです。
たとえばアパート経営を始めるときに、初期費用が5,000万円かかったとして、実質利回りが5%なら収益は250万円ということになります。
都市部と郊外では初期費用に差が出ますし、築年数によっても違いますが、5%〜6%を目指していくと良さそうです。
住宅の建設と比べると初期費用が少なくて済む駐車場経営は、利回りも高くなります。
ただしエリアによってかなり差がありますし、未舗装の土地で月極駐車場にするのか、機械を導入してコインパーキングにするのかによっても初期費用が大きく違います。
【表面利回りの相場】
・月極駐車場:5%〜15%
・コインパーキング:15%〜30%
これだけ幅があるのは、車1台あたりの駐車料金が、都市部と郊外では2倍以上の差があるためです。
また土地代も大きく違いますので、活用しようと思う土地の地価、平均駐車料金を調べて利回りを出してみると良いでしょう。
利回りは、年と共に変化していきます。また、高ければ良いというものでもありません。
利回りについて、気をつけて欲しいポイントについてもまとめました。
「利回りはこれです」と説明されても、その担当者が本当にその数字に精通しているかどうかがわかりません。
土地活用が初めての人は、表面利回り(想定利回り)を見て、計算の根拠をよく吟味することなく信じてしまいがちなので、どういった数字をもとに計算したものなのか、しっかりと確認する必要があります。
わからないことがあって当たり前なので、細かいことを聞いても誠意を持って説明してくれる担当者でなければ、安心して土地活用を任せることができません。
利回りについて納得がいくまで話を聞き、数字の根拠を説明してもらいましょう。それができる担当者に巡り会うまでは担当者を変えてもらっても良いですし、納得がいかない場合は土地活用を依頼する会社自体を見直しても良いかもしれません。
表面利回りは、マンションや駐車場に空きがないことを前提として出している数字ですが、実際には常に満室状態が続くということはありません。
賃貸経営を始めて最初から満室になるわけではなく、しばらくは空き室のある状態が続くことになりますから、予想した収益が得られないことも想定して運用を考えておかなくては経営が行き詰まってしまいます。
たとえば、家賃が7万円の部屋が10戸のアパートで考えたとき、満室なら月額70万円の利益ですが、入居率70%なら49万円です。1ヶ月でこれだけ差が出るなら、年間でどれほどの差になるでしょうか。
実質利回りを意識しつつ、稼働率が70〜80%、もしくはそれ以下になった場合も想定しておかなくてはなりません。
利回りは利益率のことですから、投資額の影響を受けます。たとえば、マンション経営の利回り5%と駐車場の利回り20%を比較したとき、駐車場の方が利回りは高いです。
それは初期投資が少ないためで、収益の額はマンション経営の方が圧倒的に高くなります。ですから、利回りの数字だけでなく、初期費用についても考慮しなくてはなりません。
収益がどのくらいになるか、その土地があるエリアの地価、ニーズなどによって変わるため、正確な利回りを出すのは難しいものです。
一見、高い利回りでも、それは物件の価格が低いから、というリスクが隠れている可能性があります。
・駅から遠いから人気がない
・賃料が高く設定されていて、実際の入居率は悪い
・老朽化が進んでおり今後大幅な修繕が必要
など、物件の価格が低い理由があるかもしれません。美味しい話には裏があると思って、利回りが高い理由を知る必要があるでしょう。
条件が良く、本当に利回りの高い物件なら、いつまでも残っているということはありえません。そのような良い物件なら競争率も高く、すでに誰かの手に渡っているのが普通です。
利回りが良いのにいつまでも売れ残っている物件は、売れ残る理由があると考えた方が良いでしょう。
売れ残っている高利回り物件は、リスクもその分高いのです。
利回りは、常に一定ではありません。将来的に変わる可能性は大いにあります。
土地活用を行なっていくうちに、建物は経年劣化しますし、駐車場にしても周辺の環境に変化があれば収益に影響が出るでしょう。
特にマンションやアパートは、10年も経てば大規模な修繕も必要になってきます。変化するランニングコストも考慮し、10年先の利回りも考えて運用していくことが大切です。
土地活用を始めるには、「マンション経営が儲かると聞いたから」などのイメージだけで活用法を決めてはいけません。本当にその活用法が適切なのかは、利回りを見なくてはならないからです。
利回りには初期投資に対する収益の割合を表す「表面利回り」と、収益から経費を引いた「実質利回り」がありますが、重要なのは実質利回りです。
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